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今日落とし、明日殺す。

Drop Today, Kill Tomorrow: Cluster Munitions as Inhumane and Indiscriminate Weapons
1997年12月 メノナイト中央委員会

【目次】 はじめに / クラスター爆弾とは何か / クラスター爆弾はどこで使用されたか / なぜ国防総省はクラスター爆弾を対人地雷禁止条約に含めることに反対するのか / 結論

はじめに

 対人地雷を禁止する運動が大きく成長したことは、対人地雷に苦しむ世界の何十万人もの人々の勇気と忍耐への賜物である。オタワ条約の制定を祝う一方で、我々はこの画期的な努力への支持を世界の国々に促したい。戦争で最も苦しんだ人々の平和と癒しへの渇望が国際政治に反映しはじめることこそ、希望への真の象徴となるのだ。

 この研究は「地雷の近い親戚」であるクラスター爆弾への注意の喚起を目的としている。クラスター爆弾は地雷に似て紛争が終った後々までも人を殺し続ける。それは多くの不発弾を残すためである。一般市民が犠牲になっている。クラスター爆弾は農産物の生産を妨げ、難民が帰還する障害となり、一家の稼ぎ手に障害を負わせて家族を困窮させ、ただでさえ不足している医療機関にさらに重荷を負わせるのだ。

 たとえ「注意深く」使用された時でもクラスター爆弾が市民に対して直ちに、そして持続的に被害をもたらすことを示して、その使用の禁止を追求したい。対人地雷の場合と同様、我々は国際社会がクラスター爆弾に関して「被害者の立場を中心とする」アプローチによって問題とすることを求めていきたい。

 この研究は、過去30年間にクラスター爆弾が使用された結果と、今日生産されているクラスター爆弾の両方について取り上げていく。クラスター爆弾の実際の使用と、その長い年月に及ぶ被害の実態は、ラオス、イラク、クウェートの例で最もよく分かるだろう。また、現在の世界各地における使用の実態についても考察していく。

 10年前には対人地雷を禁止することなど思いもよらないことであった。それはただ国際社会の認識と政治的意志が不足していたからである。地雷被害者、NGOスタッフ、政府関係者の労を惜しまぬ努力と強いビジョンのおかげで、不可能が可能になったのだ。

 クラスター爆弾によって被害を受けた世界の人々は、対人地雷とクラスター爆弾の間の法律上あるいは技術上の細かな差異など理解しないだろう。彼らは、もう一度我々が行動を起こして不可能を可能にすることを待っている。このレポートがその努力の一つとして貢献するものになれば幸いである。

1.クラスター爆弾とは何か

 クラスター爆弾は弾薬のコンテナであり、空中で割れて小さな子爆弾を放出するものである。これらの子爆弾は着弾の直後、あるいはその寸前に爆発するように設計されている。クラスター爆弾は、航空機から落とされたり、ロケットで運ばれたり、砲弾のように飛ばされるなどして用いられる。

 多くのクラスター爆弾は何百もの子爆弾を内蔵しており、それらの子爆弾が爆発すると空中は鉄の破片で埋め尽くされる。子爆弾は小さく、だいたい野球のボールくらいの大きさである。一つの爆弾でサッカーのグラウンド数面分もの面積が破壊される。100エーカーもの広さにわたって破壊するものもある。

 クラスター爆弾と対人地雷では構造も意図されている機能も異なる。いずれも空中から撒布されうるが、対人地雷は地上に落ちても爆発せずにずっと「眠り」続け、眠りが妨げられたときに初めて爆発するようにつくられている。それに対しクラスター爆弾は、地上に落ちた瞬間に爆発するように設計されており、戦争中に効果を発揮するものである。クラスター爆弾はたいていが対人地雷よりも多くの弾薬を含む。そのため、それが爆発すると破片となる厚い金属の殻に入っていることも相まって、対人地雷の場合と比べ、より上半身に損傷を与えることが多く、また死をもたらすことが多い。またこれらの子爆弾は対人地雷よりも広い範囲で殺傷力を発揮する。

 このように設計上も技術上も異なる兵器であるにもかかわらず、実際に及ぼす効果を見ると両者は大変似通っている。クラスター爆弾の不発率は5〜30%位であり、そのためクラスター爆弾が使われるとそこには地雷原ができてしまうのだ。不発で残ることは無害を意味しない。ちょっと触れただけでも爆発する可能性がある。子どもがさわったり、通行人がたまたま踏んだり蹴飛ばしたりしただけで爆発するかもしれないのである。ラオスで働く爆弾処理の専門家によると、クラスター爆弾は時間を経るに従って不安定になり、危険になるということである。

 クラスター爆弾に含まれている子爆弾の多さを考えると、たとえ不発率が低くても相当な量の不発弾が戦争が終った後にも残ってしまうことが分かる。アメリカ合衆国の政府当局によると、湾岸戦争の際、3000万個のクラスター爆弾がイラク、クウェートに落とされたということである。楽観的に低く見積もって不発率が5%としても、150万個の不発弾が両国に残っていることになる。

 「砂漠の嵐作戦」(湾岸戦争)に関する米政府統計局の報告では、陸軍が使った半数以上の多段階ロケットシステムのクラスター爆弾は5%の目標不発率を越えていて、23%になるものもあったという。この数値はロット単位のサンプル調査によるものだから戦場で使われた際はもっと高い不発率だったことだろう。

 不発だった子爆弾は、しばしば土の上によく見える形で残っている。それは、その大きさや形のためか、子どもや一般市民のみならず、土産になるものを探す兵士の目まで、神秘的なまでの力で惹きつけてしまう。爆弾であることを警告するためにつけられている印や吹き流しまでが逆に興味を持たせてしまい、何の疑いもなく手にする子どもや農夫が拾い上げて被害に遭ってしまうのだ。

 草や柔らかい土の中、砂、水溜まりの中に潜んでしまうこともある。初めは地上にあったものも植物で覆われてしまったり土をかぶったりして地中に埋もれてしまうこともある。すると、地雷と同じで周囲にとけ込み、クラスター爆弾は「隠れた殺し屋」になってしまう。ラオスで最も典型的なクラスター爆弾による事故は、苗を植えるために鋤や鍬で土を耕すときに畑や庭で起こるものだ。まさに地雷原となっているのである。

 軍の専門家も不発のクラスター爆弾が地雷となることを認識している。1995年10月に開催されたCCWの会議でのこと、南アフリカの軍人がNGOの代表者が言いかけた言葉を締めくくったことがあった。NGOの代表者らはラオスにおける“ボンビー”(「爆弾ちゃん」=野球のボールのようなクラスター爆弾の子爆弾)について話していたのだが、「ボンビーが着弾した際に爆発しないと…」と始めたとき、その軍人が「それは地雷になる」と続けたのである。合衆国の不発弾処理に関する報告書もこの南アフリカの軍人と同様な認識を示している。「不発弾は地雷ではない。しかし不発弾は、民間人の安全に対しても、戦場における部隊の移動や戦術的展開に対しても、同様な問題を引き起こす」と述べている。湾岸戦争の報告は、さらにこの主張を強調するものだ。例えば「アメリカ海兵隊はイラク軍に占領されたクウェートの国際空港に夜襲をかけようとして捕まってしまった。激しい武力による抵抗を受けたからではない。我々が使ったクラスター爆弾の不発弾と地雷によって動けなくなってしまったのである」と述べられている。

 クラスター爆弾が地雷に似通っていることは、どちらも国際的人道法に反するものであるという点でも明らかである。クラスター爆弾は、その本質からして、無差別兵器である。その基本的な使用方法は、広範囲にわたって何百もの子爆弾をばらまくというものであり、個々の爆弾に対象を設定することは不可能なものだ。クラスター爆弾を使った一つ一つの攻撃について、その正確な「足跡」を知るのは不可能である。湾岸戦争のとき、「不発弾が多く埋まっているであろう場所を割り出すことができず、それを作戦立案者に伝えることはできなかった」のだ。「現在、地上における作戦行動のためにクラスター爆弾の不発弾がある場所を分析するようなシステムは存在しない」と上記報告書は述べている。

 クラスター爆弾の無差別な性格は散布のされ方だけによるものではないことも地雷の場合と同様である。長い年月にわたって脅威となるという点からも無差別なのである。1998年はラオスでの米軍の空爆が集結した25周年の年であった。この比較的「平和」であった25年の間に、戦争中にはまだ生まれてさえなかった子どもたちに高い率で死傷者が出た。まだ生まれていない子ども達まで殺すために泥の中に潜み続けるこの兵器は、究極の無差別兵器と言えよう。

 クラスター爆弾は地雷とは設計が異なるものの、経験が示すところによれば両者が及ぼす影響はほとんど同じなのだ。クラスター爆弾は一般市民を死傷させ、戦争が終わったずっと後々までもその脅威を与え続ける。国際社会を導いて地雷によって傷ついた人々と共に立たせ、地雷禁止条約を作らせた原理が、クラスター爆弾に対しても当てはまるのである。

2.クラスター爆弾はどこで使用されたか

 クラスター爆弾は主にラオスとイラク・クウェートの2つの地域で、その脅威を刻みつけている。

A.ラオスの例

*「1年前までカム・メウン君はラオスのシェン・コウアン (XiengKhouang)地方の農村で他の少年たちと同じ様に暮らしていた。米の苗を植えたり、水牛の番をしたり、友達と遊んだりしていた。だが昨年(1996年)の11月のある朝、8歳の少年の人生は永遠に違うものになってしまったのである。二人の友達と共にザリガニを掘りだそうとしていて何か固いものが手に触った。少年が二人を呼ぼうと振り返った時、埋まっていたクラスター爆弾が突然爆発して、呼ぼうとした1人は即死し、カム・メウンは破片で目を失ったのである。もう一人の少年は軽傷を負っただけですんだ。」

*人道主義団体の調査によると、戦争が終わってから大雑把に見積もって1万人以上の人々がこうして死傷しているということである。

*およそ30%の不発率として、まだ400万個ものBLU-26(クラスター子爆弾)が今も水田や道端、地中に埋まっているのだ。1964年から1973年にわたって米軍は58万回以上の空爆をラオスで実行した。およそ230万トンの爆弾(その多くがクラスター爆弾)が落とされ、ラオスは世界でもっとも激しい爆撃を受けた国となった。平均すると、爆撃機一機分の弾薬が9年間にわたって8分毎に落とされていたことになる。カム・メウン少年が失明し、友人をボンビーで失ったシェン・コウアン地方では、当時の人口で住民1人に対して2トンの爆弾が落とされていたことになる。ラオスの政府当局者によると、わずか9年間の戦争中に落とされた爆弾を撤去するのに100年かかるということだ。

 この現在進行中の悲劇は、身体的苦痛や損傷のような見えやすい被害にとどまらない。ただでさえ重荷を背負わされている医療システムはボンビーの被害者にまで対応できていない。またリハビリのプログラムを提供する場所があるとしても、貧しい人々にはほとんど手が届かない。人口が戦前並みに増加するのに伴って広い土地が耕されるようになっていることも大変な危険をはらんでいる。土地を開拓しようとすると死傷者が出るのだ。最も多く死傷者が出るのは、農作物を植える準備で草を焼き、土地を耕す2月なのである。

B.湾岸戦争の例

「何百人もの市民がクラスター爆弾で死亡した。イラクに投下された過剰な量の爆弾によって、これから何千人もの一般市民が犠牲になっていくであろう。戦争が終った後、2000人以上のクウェート人が不発弾で負傷したが、そのほとんどは子どもたちである。」

 湾岸戦争におけるクラスター爆弾の使用は、イラクとクウェートに広大な地雷原を作り出してしまった。1994年、イラクで米軍の不発弾が13歳と11歳の兄妹の命を奪った。1993年にも同じような事故がイラクで起こった。8歳の少年が家族でピクニックをしていた時に死亡し、その妹も重傷を負ったのだ。バクダットからの報告によると、1991年8月の時点で、イラクで米軍が投下した爆弾による負傷者は440人、死者は168人にのぼるということである。

 合衆国の前司法長官ラムゼー・クラーク氏は湾岸戦争における米軍のクラスター爆弾の使用、およびCCWで使用が禁止されているタイプの弾薬の使用を非難した。不発弾は湾岸戦争での米軍兵の死因の10%を占めている。米軍の見積もりによると湾岸戦争で使われた爆弾の不発率は10〜20%であり、これは「許容範囲」の3〜5%を大幅に上回る数値である。GAO(会計検査院)は既に10年以上前からクラスター爆弾の子爆弾製造過程における品質管理の問題を指摘していたのである。

 イラクでは「地雷」と「クラスター爆弾」の間に境界線を引くことはほとんど不可能である。米軍はイラクで伝統的なクラスター爆弾もゲイター地雷も共に使用した。ゲイター地雷は、対戦車地雷とその除去防止用の対人地雷を混合して撒布するものである。クリントン大統領はオタワプロセスへの不参加を正当化する際、これらの兵器は自己破壊装置が付いているから一般市民には脅威にならないのだと主張した。しかし事実はその反対で、何百人ものイラクの一般市民が自己破壊することのなかったこれらの兵器によって殺傷されたのである。

 イラクはクラスター爆弾を含む不発弾の除去作業を今も自国領土で続けている。…1997年8月30日、イラクの報道機関は1人の農夫が畑を耕していて湾岸戦争で撒かれた爆弾が爆発して死亡したことを報じている。

*CBU--89 Gator Mine
http://www.fas.org/man/dod-101/sys/dumb/cbu-89.htm

C.クラスター爆弾が使用された他の地域

アフガニスタン
 アフガニスタンで使われてきたのは対人地雷だけではない。クラスター爆弾も広範に使われてきた。ソビエト占領下、ソビエト軍は一般市民に対してクラスター爆弾を使用した。1995年、アフガニスタン政府はロシア軍がタロカンの町とその周辺にクラスター爆弾を投下したことを非難している。ロシア政府は、これらの爆撃は国境のロシア側で、アフガニスタンに拠点をおいてロシアのタジクスタン地方独立を求めて戦っているゲリラに対して行われたものであると主張したが、アフガニスタン政府はそれを論難している。1997年、タリバンとその反対勢力の間でもクラスター爆弾が使用されている。

アンゴラ
 クラスター爆弾の不発弾が見つかっていることが報告されている。少女がキラキラするもので遊んでいて、それが爆発して負傷した事例も記録されている。

アゼルバイジャン
 アゼルバイジャン軍が、1994年にナゴルノカラバフ防衛軍に対して、1993年に一般市民に対して、民族浄化の手段としてクラスター爆弾を使用したことが報告されている。

旧ユーゴスラビア
 クラスター爆弾は旧ユーゴスラビアの紛争期間中を通して使われていた。様々な事例がある。◎リブノ(Livno)…ボスニア系セルビア人がリブノの町をクラスター爆弾で攻撃するためにオーカンロケットを使用。◎ビハック(Bihac)…ボスニア系セルビア人が国連が非武装中立地帯に定めたビハックを砲撃。NATOはこれに報復攻撃。◎バンジャルカ(Banja Luka)…ボスニア系セルビア人がNATOのクラスター爆弾使用により、一般市民が犠牲になっていると主張。◎ジビニス(Zivinice)…ボスニア系セルビア人がクラスター爆弾でトゥズラ(Tuzula)の南にある難民キャンプを攻撃。7人が死亡。
 1995年5月2〜3日、クラジマ(Krajima)地域のセルビア人が、クラジマ内の領土を取り返そうとするクロアチアの行動への報復として、クロアチアのザグレブの市民を標的に砲撃した。オーカンM-87多段階ロケット発射装置でクラスター爆弾が撒かれ、5人が死亡、30人が負傷したと報じられている。クラジマのセルビア人リーダーのミラン・マルティックは攻撃を命令したとして1995年7月に告訴された。戦争犯罪法廷でマルティックが告訴されたのはクラスター爆弾を意図的に用いたからである。すなわち着弾と同時に爆発して殺傷する兵器としてのクラスター爆弾を市民に対して用いた責任を問うたのだ。だが、その時に不発だった子爆弾についても、それらが後で無差別に爆発して人を殺すことを知っていたはずであるとして、責任を問えたのではないだろうか。
 報道によると、このときNATOはセルビア人が砲座を設置していた場所に対してもクラスター爆弾を用いなかったということである。通常はそういった目標物に対して使われるのだが、「子爆弾の10個に1個が不発弾になって残り、後々までも市民に危害を与えるため、容認できない」と考えられたためである。

チェチェン
 伝えられるところによると、ロシア軍、チェチェン軍ともにクラスター爆弾を使用したということである。1994年にロシア軍がチェチェン首都をクラスター爆弾で攻撃。30人が死亡。1996年にも同様の攻撃をして、10人が死亡している。両者共に相手が国際協定で禁止されているクラスター爆弾を使用したことを非難している。

コロンビア
 人口密度が高いメデリンでクラスター爆弾が爆発して30人が死亡する事件があった。これは麻薬関係の重要人物逮捕の報復として仕組まれたものであった。

エチオピア
 90年代初期にエリトリア独立運動を押さえるため、当時エチオピアで権力を握っていたメンギスツ政府は市民に対して繰り返しクラスター爆弾を使用した。例えば近くに港湾施設があってもそれは狙わず、市民のみに的を絞って攻撃し、50人が殺されたこともあった

グルジア
 1992年12月にクラスター爆弾を使用したとしてアブハジア民族独立運動側がグルジア政府軍を非難している。

レバノン
 1970年代後半、イスラエルはレバノン市民に対してクラスター爆弾を使用した。軍事評論家が以下のように報告している。「レバノンへの最初の侵略で、イスラエルは米国製のクラスター爆弾をほとんど無差別に大量に使用した。それらの子爆弾はそこら中に散らばっている。国連の爆発物処理チームはこれらの除去に相当な時間と労力を費やさなければならなかった。これらの爆弾はテニスボールのようで、しばしば子どもたちが手にしてしまい、爆発して、むごたらしい傷を負わせている。畑を耕していて農夫が被災したり、遊牧している家畜が被害に遭うことも多い。」

ニカラグア
 1987年、ニカラグア政府軍が反政府軍に対してクラスター爆弾を使用したことが伝えられている。政府軍はソビエト製の爆撃機で500ポンド級のクラスター爆弾を投下した。

シエラレオネ
 1997年5月、シエラレオネでアフマッド・テジャン・カバー大統領が率いる文民政府が軍のクーデターで倒された。西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の同盟関係による支援としてナイジェリアが軍事介入。同年10月、ナイジェリア陸軍はプラスティック製の地雷を使用、ナイジェリア空軍がクラスター爆弾を使用したとされ、非難された。

トルコ
 トルコはクルド人の村にクラスター爆弾を投下している。これはトルコが米国からクラスター爆弾を輸入しようとして失敗した大きな原因の一つとなった。1994年、トルコ政府は、イラク領内のクルド人反乱軍を爆撃しようとして誤ってイラン市民に対してクラスター爆弾を使用してしまったことを謝罪している。1997年、クルド人反乱軍はトルコがイラク北部でクラスター爆弾を使い続けていることを非難する声明を出している。

3.なぜ国防総省はクラスター爆弾を対人地雷禁止条約に含めることに反対するのか

 米国防総省が対人地雷禁止条約及び地雷を禁止する国内法制定に反対するのは、様々な種類のクラスター爆弾を含みうる対人地雷の定義が一因となっている。1997年7月、オタワプロセスで検討されていた禁止条約の対人地雷の定義に「本来の目的として(primarily)」という言葉を入れないと対人地雷以外の複数の兵器システムも禁止されうることに気がついて国防総省は“戦慄”した。

 何故、この「本来の目的として(primarily)」というたった一語がそれほどに問題とされたのか?当時検討されていた国内法は対人地雷を「人間がそこに存在、接近、接触することで破裂または爆発するように設計され、組み立てられ、または改造されたもので、人の身体能力を奪う、あるいは人を殺傷する」弾薬としていた。(amunition that is "designed, constructed, or adapted to be detonated or exploded by the presence, proximity or contact of a person and that will incapacitate,injure or kill one or more persons")オタワ条約は、ほぼ同様な定義を採用している(*末尾にオタワ条約の対人地雷の定義を掲載)。

 米国防総省の政策立案者たちは、ここに「本来の目的として (primarily)」という一語を挿入しようとした。「対人地雷とは、人間がそこに存在、接近、接触することで破裂または爆発することを本来の目的として設計され、組み立てられ、または改造されたもので、人の身体能力を奪う、あるいは人を殺傷する弾薬である」(amunition that is "primarily" designed, constructed, or adapted to be detonated or exploded by the presence, proximity or contact of a person and that will incapacitate, injure or kill one or more persons)。「本来の目的として」という言葉を入れないと、クラスター爆弾のように結果的に対人地雷と同じ働きをしたものも条約が禁止する対象に含まれてしまうことを怖れたのだ。

 彼らが「本来の目的として設計され」という言葉が入っていない対人地雷の定義に対して以下のように述べたとき、念頭に置かれていたのはラオスで使われたクラスター爆弾のことだった。「ラオスにおけるその問題の95%は1960〜70年代に落とされた不発弾である。これらは古いタイプのクラスター爆弾だ。“本来の目的として”という表現を入れていないこの対人地雷の定義を採用するならば、こうした不発弾の率まで問題にすることになってしまう。我々がどうしても必要としているシステム(runway and island munitionsなど)まで手放すことになりかねない。我々はそれを憂慮しているのだ。対人地雷禁止条約について話し合うとき、本当に対人地雷について話し合っているのかどうか確信を持ちたいのである。」

 国防総省の政策立案者の視点からすると、「本来的に」対人地雷として設計されていないものであれば、実際にそれが対人地雷となっても、それは対人地雷ではないのだ。あらかじめ一般市民に被害が予想されることが分かっていながら、そのように論じるとはどういうことだろうか。兵器製造業者は、様々な状況におけるクラスター爆弾の殺傷力を設定するためのコンピューターモデルに不発率を組み込んでいる。このモデルは、30年前に使われた古いタイプのクラスター爆弾ではなく、現在使われているクラスター爆弾のためのモデルなのだ。あらかじめ不発弾が出ることが分かっていてクラスター爆弾を使うということは、事実上そこに地雷原を作るということと等しいではないか。

 クラスター爆弾はどんどん“ハイテク”化しており、また軍事関係者が好んで使うようになっている。軍事関係者に地雷規制派が増えているのは、地雷が“ローテク”な兵器だからかもしれない。ローテクで安価な地雷の製造、販売の禁止という考えは、それが反政府組織に利用されていることも多いために、“ハイテク”装備の軍に受け入れられるようになったのだろう。クラスター爆弾とその弾薬(子爆弾)ならば、反政府組織にはまず入手が不可能になる。

 新世代のクラスター爆弾であるCEM(Combined Effects Munitions)は様々な方法で破壊、死傷させることができるように設計されており、それだけに対人地雷と比べて規制をかけるのが難しい。典型的なCEMは3つの目的で利用することができる。(1)対人散弾で兵隊や市民を殺す。(2)18ミリの鋼鉄までも焼き通す対装甲弾で戦車を破壊する。(3)焼夷弾的なもので建物を発火させる。これらに加えて“非”意図的に、(4)着弾しても爆発せずに地雷として機能させる、という目的で使うこともできる。

 米軍は、クラスター爆弾の新技術に、冷戦が終わって役立たずになったと思われていたB1-B核爆撃機を再利用するすべも見いだした。B1-Bは今は通常爆撃機として使われている。あまりに役立たずと考えられたため湾岸戦争では空軍の兵器の中で唯一投入されなかった。だが新世代クラスター爆弾用の爆撃機として新たな役割を見いだしたのだ。最初の利用試験は1997年5月28日にエグリン空軍基地で行われ、9月には必要な改造が施され、1000ポンド級のクラスター爆弾を10機搭載できる爆撃機として生まれ変わった。何億ドルもの値段で購入されたB1- B爆撃機はこれまで戦闘に使われたことは一度もなかったが、最近になってクラスター爆弾を装備して2機がバーレーンの空軍基地に配備されたのである。

 空から撒く弾薬に頼るようになっているのは米軍に限った話ではない。これは世界中に広がってきている傾向である。軍部は、クラスター爆弾の規制に対しては、これからの戦争における戦略や兵器システムに必須なものであるという理由で反対するだろう。例えば世界の多くの国の空軍で採用されている“Joint Stand Off System”において、対人弾薬を含むクラスター爆弾は重要な構成要素になっているのである。

4.結論

 クラスター爆弾が着弾した瞬間に爆発するように設計されているとはいえ、我々は安心できないのである。クラスター爆弾は正確にねらいを定めるのが難しく、その「足跡」は広範囲に渡ること、またたとえ低い不発率であっても大量の不発弾を生み出すことが、これまでに使われた実態から分かっているのだ。これらの結果はその場限りのものではない。クラスター爆弾が使われればいつでも予期される事態なのである。この点については軍の政策立案者も戦争でずたずたにされた国の人々も同意することだろう。

 地雷廃絶キャンペーンは、紛争が終わったあとに被害を受ける人々の視点から兵器は評価され、規制・禁止されうるのだということを示してくれた。これは世界にとって画期的な贈り物である。地雷原にあって田畑や社会を復興しようと苦闘している地雷に被災して生き残った人々は、地雷が人間のいのち、安全、生活にとって重たすぎる枷となることを教えてくれている。クラスター爆弾は、人と社会に及ぼす効果において地雷とほとんど同じであり、地雷の場合と同じ視野において検討されるべき兵器である。クラスター爆弾を世界の兵器備蓄庫からなくすために実効性のあるはっきりとした対策をとらなければならない。その必要を示す首尾一貫とした証拠がどんどん集まってきているのである。

December 1997, Revised June 1999
Prepared by Virgil Wiebe, International Law Consultant, MCC
Titus Peachey, Staff Associate for Peace Education, MCCU.S.

※元のレポートに付属する資料:

1.アメリカ合衆国のクラスター爆弾に関する予算(1997-2001)
2.アメリカ合衆国および各国が保有する主要なクラスター爆弾 (子爆弾)のタイプと量

※「対人地雷の使用、備蓄、生産及び委譲の禁止並びに廃棄に関する条約」第2条定義

1."Anti-personnel mine" means a mine designed to be exploded by the presence, proximity or contact of a person and that will incapacitate, injure or kill one or more persons. Mines designed to be detonated by the presence, proximity or contact of a vehicle as opposed to a person, that are equipped with anti-handling devices, are not considered anti-personnel mines as a result of being so equipped.

2."Mine" means a munition designed to be placed under, on or near the ground or other surface area and to be exploded by the presence, proximity or contact of a person or a vehicle.

3."Anti-handling device" means a device intended to protect a mine and which is part of, linked to, attached to or placed under the mine and which activates when an attempt is made to tamper with or other wise intention ally disturb the mine.

(翻訳 小林ゆみこ 監訳 真野玄範)